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2016年1月28日木曜日

ブラックホールの特異点は存在するか?



昔ある本の中で、ブラックホールは無限の質量を持っているという記述を見たことがあります。しかしこれは間違いであることに直ぐに気付きました。だって、無限の質量を持っていたらそれだけで全宇宙の質量を越えてしまいます。ブラックホールにだって有限の質量があります。

では何が無限なのでしょうか?一般相対性理論では、ブラックホール内部に空間の曲率と密度が無限大になる点が存在するとされています。空間の曲率というと何だかよく分りませんが、これは重力が無限大になるということです。この点を「ブラックホールの特異点」と呼びます。

ここで「点」と書きましたが、これは静止しているブラックホールの場合で、回転しているブラックホールでは特異点はリング状に存在します。重要なのはどちらの場合も、特異点は体積を持たないということです。何しろ密度が無限大なので、少しでも体積を持った瞬間これまた宇宙の質量を越えてしまいます。それにしても体積が無いのに密度が無限大?訳分らないでしょう?

更にやっかいなのは特異点がブラックホールの外に出てしまうことがあるということです。特異点は通常、光でさえ脱出することができなくなる境界領域「事象の地平線」の内側に在ります。その場合外側の世界に対して何等影響を与えることができないので、外側の世界は何とか秩序を保っていられます。

しかし一般相対性理論的は、特異点が必ずしも事象の地平線の内側に在ることを要求していません。外側に出てしまっても理論的に何ら矛盾は発生しないのです。このブラックホールの外側に出てしまった特異点の事を「裸の特異点」と呼びます。

ブラックホールの内側に特異点がある場合は特異点以前にブラックホールがとてつもなく危険なので、絶対に近づいてはいけません。

しかし裸の特異点がポンと目の前に表われたらどうなるでしょう?全てを破壊しつくすものすごく恐ろしい存在かもしれませんし、ひょっとしたら誰も気づかない全く無害な存在かもしれません。何しろ計算できないのですから何が起こるかまったく分かりません。

裸の特異点が存在するかどうかはブラックホールを語る上で最大の謎ですが、それ以前に特異点そのものが本当に存在するのでしょうか?これは専門家でも意見が分かれています。

そもそも特異点というのは、一般相対性理論では計算できない領域の事であり、これはつまり一般相対性理論が適用できない領域であるということと等価です。それを無理矢理一般相対性理論で語ろうとするからこういう訳の分からない事になってしまうのです。実存する物理的な存在である以上、無限大や無限小になる手前で、未知の物理法則が働いて、有限の体積、有限の密度に落ち着くのではないでしょうか(と考えている研究者も多くいます)。

このようにブラックホールは謎だらけなのです。考えれば考える程パラドックスが出てきます。だから面白いのですが。

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